ユースセンターに関する記録資料を用いたデータセッション
日時
2023年1月21日(土)16時~19時30分 @ 東京大学大学院情報学環福武ホールラーニングスタジオ2
参加者
- ユースワーク実践者:8人
- 研究者・大学院生:5人
提供データ
データに関する洞察
b-labに関しては、まれびとプロジェクトにおいて大学院生と中学生の会話が始まる場面を記録したデータを共有した。
参加者の大学院生から「最初にトランスクリプトを読んだ時はユースワーカーが焦ってしゃべっているのかと思ったが、ビデオを見ると印象が全然違った」という発言があった。当初提示していたトランスクリプトは会話内容だけを起こしたもので、言いよどみや沈黙などの情報は含まれていなかった。
そこで同じ場面について、執行君が会話分析のために作成したトランスクリプトも提示したところ、参加者一同から「おおー」という声が上がった。
会話内容のみのトランスクリプト
YW: これちょっと……今日さ、え、今まだ暇?もう帰る?
JH: 6時……ちょい前くらいまで
YW: あ、じゃあ大丈夫。ちょ、何分くらいですかね、5分くらいすか
GS: 5分くらい
YW: ちょっとー……手伝ってほしいことがあるんすけどいいですか
YW: まじ?
会話分析用のトランスクリプト
YW これちょっと:(1.3)きょうさ:-え今まだひま?(0.5)も-もう帰る?
((JH、時計を見る))(1.2)
JH ( ) ろくじ::ちょい前くらいまで
YW あっ じゃ:大丈夫
((JH、首を縦に振る))(0.3)
YW (ちょ)何分¥くらい¥ですかね、5分くらいすかあ[の
GS [5分くらい
YW ちょっと: (1.1)手¥伝っ(h)てほしいことがあるんすけど¥いい(で)すか
((JH、「ほしい」でYWの方を向いて小さく縦を首に振る))YW まじ¿
(YW:ユースワーカー、JH:中学生、GS:大学院生)
「今まだ暇?」「手伝ってほしいことがあるんすけどいいですか?」という発話は、切羽詰まってなされているのではなく、間をとりながらなされている(こうした間の取り方を合気道になぞらえて説明する実践者もいた)。
中高生を無理矢理巻き込むのではなく自由な選択の余地を残しながら新たな活動へ誘うのはユースワーカーの職能の一つだと考えられる。だとすれば、ここでは発言内容だけでなく発言のやり方のデータまで用意されてはじめて彼らの実践が捉えられることになる。ユースワーク・ユースセンターの研究にとって相互行為分析が有効であることを示唆している。